1 はじめに
今回の記事は、①弁護士になりたいという気持ちが少しはあるけれど将来食べていけるのか不安に思っている方、又は、②弁護士とのお付き合いや結婚を考えているけれどいざ結婚した場合に生活していけるのか不安に思っている方向けとなっております。
これらによく似たお問い合わせが寄せられていたこともあり、せっかくなので記事にしてみました。
そのため、現役の弁護士や司法修習生の方にはすでにご存じの情報が多いかもしれません。
(1)弁護士は稼げない?食べていける?結婚して大丈夫?
新聞・テレビやネットのニュースでは、近年の司法制度改革の失敗等により、稼げておらず生活に困窮している弁護士が増えているという方向性の情報が流れています。このようなネガティブな情報に日々接していると不安になりますよね。
もちろん、そんな情報を聞いたくらいで弁護士の道を諦めるのであればそもそも弁護士になるべきじゃないという意見もあるようですが、私はそうは思いません。仕事はやりがいだけではなく、やはり一定程度の報酬も欲しいと思うのが通常ではないでしょうか。
では実際はどうなのでしょうか?
結論から申し上げますと、確かに、旧司法試験時代の特に合格者数百人時代に比べれば、年収の水準は下がったものの、個人的には、それでも普通に頑張れば一般企業のサラリーマンになるよりは稼げると思います。
ですので、弁護士になりたいという方には、今の気持ちを大切にして予備試験・司法試験の勉強を進めてもらいたいと思います。
また、弁護士と結婚しようか迷っているという方にも、一般論としては、稼ぎを不安に思う必要はないといいたいですね。ただ、ダメになるときはサラリーマンでもダメになるのですから、万が一、ダメになった場合には、家族として支えてあげたいという気持ちを持つのが良いのではないでしょうか。
(2)新型コロナウイルスの影響は?
前置きが長くなり恐縮ですが、本題に入る前に、本記事の投稿日(2020年4月20日)現在、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、経済状況の見通しがつかなくなっております。弁護士業界に与えるインパクトはどれほどなのでしょうか。
ネガティブな点も多いと思います。まず、訴訟案件については基本的に期日が延期されることになっていますので、訴訟案件を着手・(成功)報酬形式で受け取る契約をしている場合、訴訟の終了時期が後ろにずれ込むため、それに伴い(成功)報酬を受け取る時期も後ろになってしまします。次に、企業においては、前向きなビジネスを進めるところは少なくなる傾向がありますので、新規事業・プロジェクトに関するリサーチ・(M&A含む)契約締結交渉等は減少するでしょう。特に株価等と連動するプロジェクト(上場や新株の発行等)は激減するでしょう。
一方、企業の現状維持に関する相談は、引き続き多くあります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大状況に応じた対応等(例えば、テナントの賃料減額等)についての相談も多くあります。そして、もう少しすると大型含む倒産案件が増加すると予想されていますので、倒産弁護士が活躍が見込まれます。なお、倒産案件に全く関わらない弁護士は極めて少数派と思われます。
このように、全体的にはマイナスに影響するものの、一般企業ほどのインパクトは受けないのではないかと個人的には予想しております。
したがって、現在の状況下においても、弁護士は稼げるか?という問いに対する私の答えは変わりません。
2 年収はどのように決まるのか
経営者弁護士(パートナー弁護士、以下「パートナー」とします。)であれば、自分の売り上げから経費(オフィス賃料、スタッフの給料、アソシエイトへの報酬等)を引いたものが自分の収入になります。四大法律事務所のパートナー等若干イレギュラーなルールがある例もありますが、細かい例外は捨象しますね。
一方、パートナーに雇われている弁護士(アソシエイト弁護士又はイソ弁と言われます。以下、「アソシエイト」とします。)の収入はパートナーないし所属事務所との契約で決まります。
一般的には以下の2パターンが多いと思います。
①総額が予め決まっているパターン
年俸●万円と決めて12分割で毎月受領。変則系として、例えば14分割等して、毎月受領しつつ、夏や冬に残りを上乗せで受領するパターンもあります。これをボーナスと呼ぶ事務所もあるようですので注意してくださいね(笑)
②ボーナス(歩合を含む)有のパターン
年俸●万円と決めるところまでは①と同じですが、ベース年俸に加えて、事務所の業績や個人の評価に応じて夏や冬にボーナスが支給されるパターンです。中には、歩合制として、厳密に計算方法等を契約で定めている事務所もあるそうです。年次が上がるにつれて歩合部分の割合が増えていく事務所もあると聞きます。細かい内容は千差万別といったところでしょうか。
なお、雇用契約か業務委託契約かで給料となるか報酬となるかといった細かい違いもありますが、分類し始めるときりがないのでいったんここまでとします。
3 事務所タイプ別想定年収(+上昇幅)
さて、ようやく本題に入ります(笑)ただし、あくまで私が直接知っている情報や同期等から得た情報に基づき記載する内容ですので、内容の完全な正確性は保証できません。この点、ご留意ください。
また、以下法律事務所の種類ごとに説明していますが、法律事務所の分類については過去の記事のこちら(その1)とこちら(その2)をご参照ください。
(1)四大法律事務所
四大法律事務所の年収については色々と出ており、ご存じの方も多いでしょうが、基本いずれの事務所も②パターンで、新人は、年俸ベースが約1200万円スタートと言われています。これに加えてボーナスが出ます。なので新人の年収はボーナス込で1500万円程度というイメージと思われます。
また、上昇幅としては、各事務所の体系によって異なりますが、大まかに言って毎年ベース年俸は50万以上アップ、ボーナスはもう少しアップという感じでしょうか。3・4年目で年収が2000万を超えるか超えないかという人たちが多いのではないでしょうか。一部2・3年目以降完全歩合制に移行する事務所もあるので働き方次第という面もありますが。
どこまで上がるのかという点については、アソシエイトの年収は3000万円程度で頭打ちと言われています。留学とか出向を挟むことを踏まえると、頑張れば弁護士10年目くらいに到達できると言われています(完全歩合の事務所では働きまくれば3・4年目でも到達可能らしいですが。)。
そうこうしているうちにパートナーになる/独立/企業に転職等の話が出てきます。
パートナーになれば年収は天井知らずになります。一方で、お客がつかなければアソシエイト以下になるリスクも一応想定されますが、四大法律事務所でパートナーになれる人材がそのような事態に陥ることはほとんどないと思われます。
(2)外資系法律事務所
外資系法律事務所以下については、四大法律事務所と違って、グループ分けしたとはいえ母数が多いので、あまり詳しく具体的な数字は出しにくいのですが、可能な限り書いていきたいと思います。
外資系法律事務所の中でもトップファームと呼ばれているような事務所では、日本支部の新人日本人弁護士についても四大法律事務所と同等以上の待遇をしています。また、トップファームでは、年収の上昇幅も四大法律事務所と同等以上であり、3000万円を超えても実績に応じてボーナスがグングン上昇すると聞きます。
ただし、法律事務所だけにあてはまる話ではありませんが、業績が悪いときのボーナスの下がり幅は四大法律事務所に比べて外資系法律事務所の方が大きいようです。
なお、少数派かもしれませんがマイナーな外資系事務所では、新人の年俸ベースが1000万円を切るところもあるようです。
(3)準大手法律事務所
準大手法律事務所の中では、新人のベース年俸を四大法律事務所と同等としている事務所もあるようですが、ボーナス込みで見た場合、四大法律事務所よりも落ちるようです。
特に、生活コストが違うという点もあるでしょうが、大阪を本拠地とする事務所は、準大手法律事務所に分類されるような事務所でも新人の年収が1000万円を超えないところもあるようです。ただ、数年もすれば1000万円は超えると聞きます。
ただ、後でも書きますが大阪では個人受任(アソシエイト個人で受任し案件を処理し報酬も何割か(ゼロとする事務所も有)を事務所に納め残りはアソシエイト個人で受け取ること)が認められている事務所が多いので、事務所からの収入が少なくても個人受任を頑張れば2000万を超えることは可能と思われます。もっとも、個人受任で忙しくしているとパートナーにならないかと誘われたり独立を促されたりするのでバランス感覚が必要かもしれません。(アソシエイトの個人受任可の事務所でのパートナー就任は、事務所からの固定収入がなくなるという点で喜んでばかりはいられないと聞きます。 )
なお、誤解を招くと困るので念のための捕捉ですが、四大法律事務所の中にも個人受任可の事務所はあります。
(4)中堅法律事務所
この辺になってくると千差万別すぎて何とも言えないのですが、全体的には年収的に準大手法律事務所より一段少ないという感じといったイメージです。
事務所からの年収は準大手法律事務所に比べて少ないものの、傾向として、個人受任事件をたくさん捌いて早く自分の看板で仕事をできるようになれといった感じで個人受任を推奨している事務所が多いように思います。
(5)ブティック系法律事務所
ブティック系法律事務所は一般的に年収が高いイメージです。一部では四大法律事務所と同等の待遇という事務所もあるようです。
(6)企業法務系法律事務所
(7)の一般民事事務所と並んで日本で一番の多数派と思われるタイプですが、新人弁護士が事務所から得る年収は600万円程度が中央値ではないでしょうか。600万円を切ると、特に東京では少ないなという印象を持つ弁護士は多いと思います。
一方で、月額30万円で求人を出している事務所もあるようです。これが私が聞いたことのある最低額です。
中には、個人受任を禁止する事務所もあるようですが、おおむね個人受任を容認又は推奨している事務所が多い印象です。
(7)一般民事事務所
こちらは(6)企業法務系法律事務所とほぼ同じと考えてよいと思います。
(8)刑事事件専門法律事務所
こちらも(6)(7)とほぼ同じと考えてよいと思います。刑事事件専門法律事務所の待遇には詳しくないので、この記事を作成するにあたり少しネットサーフィンをしてみましたが、まさに年俸600万円で新人弁護士を募集している刑事事件専門法律事務所がありました。
(9)新興系法律事務所
こちらは弁護士業界内での評判があまり良くない事務所が多いため、待遇面は良い事務所が多いようです。ただ、今ウェブサイトを見ると年俸650万円(支店長コース)、500万円(地域限定コース)とする事務所もあり、待遇面は良いという評価も一概にできない状況になってきているのかもしれん。
一方、別の新興系法律事務所のウェブサイトでは6年目の弁護士の平均年収は1000万を超えていると示されており、待遇は悪くないと言えそうです。
4 最後に
東洋経済のこちらの記事では、(上場企業の )『30歳推計年収は377万円、平均年収は465万円』とのことですので、上場企業のサラリーマンになるよりは稼げるという説明は合理的かと思います。
ですので、弁護士の仕事に魅力は感じているが将来が不安なので一般企業に就職しようか迷っているという方は、将来を過度に悲観せずに我々の世界に飛び込んできてほしいと思います。
少しでも皆さんの参考にされば幸いです。
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